2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
引っ越し先近くのフルーツショップへ向かう。 外観の印象としては、夕刻人でごった返す商店街の八百屋の雰囲気を彷彿とさせる。 そういった少し懐かしいものを感じ取るが、午前中に向かったためか私以外にお客さんは見当たらなかった。 店先に数々のフルーツが連ら重なっており、中に入ると多少の野菜が申し訳程度に置いてある。入ると同時に年配の店員さんが3人とも一斉に振り向く。 畏縮しながら野菜を見ているふりをすると、 お姉さん、これもどう? と声を掛けられる。 見るとおばあさんの手には豆苗が握られていた。 「これ食べるとね、ピン!とするから。ほんとするから。」 「ピン!ですか…」 あまりのおばあさんの自信のある笑顔に、さらに畏縮する。 「あの、とりあえず店先の大玉みかんだけください。」 「まいどどうもー。」 おばあさんは私が店を出るまでずっと笑顔を崩さなかった。 帰路に就くまでの間、豆苗に脳の大半を侵略されやはり明日買おうと決意する。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!