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引っ越し先近くのフルーツショップへ向かう。
外観の印象としては、夕刻人でごった返す商店街の八百屋の雰囲気を彷彿とさせる。
そういった少し懐かしいものを感じ取るが、午前中に向かったためか私以外にお客さんは見当たらなかった。
店先に数々のフルーツが連ら重なっており、中に入ると多少の野菜が申し訳程度に置いてある。入ると同時に年配の店員さんが3人とも一斉に振り向く。
畏縮しながら野菜を見ているふりをすると、
お姉さん、これもどう?
と声を掛けられる。
見るとおばあさんの手には豆苗が握られていた。
「これ食べるとね、ピン!とするから。ほんとするから。」
「ピン!ですか…」
あまりのおばあさんの自信のある笑顔に、さらに畏縮する。
「あの、とりあえず店先の大玉みかんだけください。」
「まいどどうもー。」
おばあさんは私が店を出るまでずっと笑顔を崩さなかった。
帰路に就くまでの間、豆苗に脳の大半を侵略されやはり明日買おうと決意する。
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