オタクのバレンタイン

　少し、すっとした。魔女札こと、ウィッチーズカードバトルは俺の今の生きがいだ。半年前に深夜アニメを見て以来、ドハマりしている。
　魔女に選ばれた女の子が、カードの力で魔法少女になり、魔界の女王を目指すと言う、美少女バトルアニメだ。
　一期は主人公の白魔女ミハルが激闘の末、必死に手に入れたカードを、ライバルの黒魔女ツバキが、闇の世界に投げ捨てるところで物語が終わってしまった。
　二期は当然、ミハルがカードを集め直す物語になるのだろう。闇の世界は強敵が待っているだろうし、一期でやっつけた魔女っ子たちがオールキャストで仲間になるかもしれない。あ～っ、早く二期が始まらないかな。続きが気になってしょうがない。
　俺は期待に胸を膨らませながら家に帰ってきた。ん………？
　郵便ポストに何かが入っている。あ～～～～～～～～～～～っ。全身の血が逆流した。
　俺は震える手で、レターサイズの小さな郵便物を手に取った。お洒落な白い包装紙、その大きさ、重さ、俺宛の住所。そしてトドメとばかりに書かれた、ハートマークの添えられたハッピーバレンタインの文字。中身はバレタインチョコレートに間違いない。
　心拍数が限界値まであがる。俺はチョコレートを握り締めると家のなかのリビングに直行した。包装紙の匂いを嗅ぐとほのかにチョコレートの匂いがする気がした。