節分に寄せて 次の日の朝は

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翌朝には雪も上がり、朝陽が真っ白い雪野原を照らしている。 隣には人のいた跡すらなく、俺は冷たい畳の部屋できちんと寝巻きを着て横たわっていた。 病で弱っている筈の身体が今朝は妙に軽かった。 郵便局の配達員が珍しくガラリと玄関の引き戸を開けるなり奥へ声をかけて来た。 「 いますか!直井さん 」 俺が顔を出すと、 「 あー居ましたか、良かった 」 と言うので思わずわけをただす。 「 いや、ね、鳥居の向こう角の東屋さんがね、神社の井戸の脇の。 ほれ、鬼を封印したと言われてる石が動いてるって言うんですわ 」 「 石、、あの大きな? 」 「 そうそう、それがね雪も被らず横に動いてるって 。 その足跡が直井さんの家の方まで続いてたっていうんで、私がちょっと様子見てみるわってことになってね 」 「 そうですか、それはご心配かけて 」 「 いや~それはいいんだけど、身体はどうですか?こんだけ冷えるとねぇ 」 「 もう、身体のことは、諦めています……治る病気でもないですから 」 「 ふん、まぁ、そう言わず、安生してくださいね 」 と言いながら郵便配達員はキラキラと木漏れ日の漏れる雪道を戻っていった。 故郷に遅い春が来て、 もしまだ生命の宿りが残っていたら、 その石の所まで行ってみようか。 今度は俺から逢いに行こう。 左の薬指には鬼の残した噛み跡が柘榴色に遺っていた。
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