プロローグ

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遥か遠い昔。 まだ、人間達が『魔法』という、不思議な力を使えた時代。 世界は【光】の国と【影】の国に分かれていた。 【光】は辺りを明るく照らす、暖かな存在。 そして【影】はその光を支える存在。 お互いのバランスがあってこそ、この世界は均衡が保たれていた。 このバランスについては未だ詳しく解明されていないが、どうやら【光】と【影】のバランスを保つ力を持った、いわば「中立の存在」がいるらしい。 その力のおかげで、この世界は平和に満ちていたようだ。 だが、そのバランスがゆっくりと崩れ始める。 【影】の国は、【光】の国をよく思わなかったのだろうか、密かに襲撃の準備を始めていた。 【光】の国へ偵察、いわばスパイを送るため、1人の男を呼び出す。 その男は【影】の頭首の命令により、しばらくの間、スパイ活動を行った。 本来、【光】の国に入れるのは【光】属性の力を持つ者のみであり、【影】の国も同様、【影】属性の力を持つ者のみである。 だが、その男は生まれながらにして【光】の力も【影】の力も持ち合わせていたために、スパイとして推薦されたのだった。 【光】の国に入国し、密かに活動を進めていたが、 街を歩いている時、ある女性と出会う。 銀色の長い髪を後ろで束ねた細身のその女性は、大きな荷物を持った老婆に対して、荷物運びを手伝おうとしているのだろう。 流石に女性と老婆ではまだ手は足りないように思えた。 スパイの男は、もともと争いごとを嫌う様な優しい男であったため、手伝おうと二人に駆け寄った。 声をかけると、老婆は男にお礼の言葉を繰り返し、荷物を男に預けたのである。 老婆を家まで送り届け、一緒にいた女性と途中まで一緒に帰った。 外見の美しさ、彼女の優しい人柄、そして綺麗な声色。 男は不覚にも、その女性に恋をしてしまったのである。 そして彼女もまた、男の優しい人柄を見て恋をしたのだった。 その出来事以来、街中で出会うことがあれば楽しく話をしたり、二人で出かけたりと、楽しい日々を送った。 だが、話をしていく中で、男は彼女が国家資格を持つ学者であることが分かり、悩み始める。
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