プロローグ

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答えは簡単。 彼女も、男を愛していたからだ。 「もし、あなたが私の前から姿を消したとしても、私はあなたを探し続けます。 たとえ、どんな危険があろうとも。 それこそ、【影】の国の兵士さんに命を狙われようとも。 だって、あなたの素性を知った上で、私はあなたを愛しているから。 それに、他言無用であろうことを私に言った以上、あなたもこれから無事に生きられるわけじゃないはず。 どうせお互い危険にさらされるんだったら、このまま二人で逃げてしまえばいい。 逃げたところで、危険であることに変わりはないけれど、私は今ここで覚悟を決めました。 …それでも、あなたと一緒にいては行けませんか?」 先程まで笑顔でいたはずの彼女は、いつの間にか強い眼差しをしていた。 これだけの強い意志を持った人を、男は今まで見たことがなかった。 男は彼女の強い眼差しに負け、二人で彼女のいう村へ逃げることにした。 ……何があっても、彼女を守ってみせる。 それが母国を裏切った自分の、最初で最後の使命である、と。 数日後の真夜中、二人は大樹のある丘の上で待ち合わせをし、移動を開始した。 それからはもう、長い長い道のりだった。 【光】の国の都会から北へ、4日の時を経て移動し、やっとの事でその村につく。 彼女の知り合いの老人に事情を説明すると、その人は快く協力をしてくれ、二人で暮らせる家や家具、食べ物までも提供してくれた。 その他の村の住人も、二人に対して笑顔で迎えてくれた。 それからは何事もなく、平和な時が流れる。 この村に来て2年が経過する頃、二人の間には二人の子供が生まれていた。 上は男の子、下は女の子。年子の兄妹だ。 母子共に健康。無事に出産を終え、これからまた幸せな暮らしが待っているであろうと、誰もが思った。 なぜ、そう思ってしまったのだろうか。 皆、ここで油断をしてしまったのだろうか。 誰もが願ったその思いは、その油断を狙ったかのように、まるで水中に出来た泡の如く壊されてしまったのである。
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