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そう頷いた私は、あの時の雪だるまのように優しく微笑めているだろうか。
――――それでも、変わることはできるよ。
一緒に泣き出してしまった私に言った、最後の言葉。
朝に起きた時には目が赤く腫れてしまったけれど、それでもどこか清々しい気持ちで。
まるで私の心に降り続けていた雪が全て水へと生まれかわり、心を綺麗に洗ってくれたかのようだ。
あれからも雪は私の心に降り続き、溶けては心を洗ってくれる。
『大切なお話を、そして演奏を聴かせてくださり、ありがとうございました』
「こちらこそ、ありがとうございました」
私と女性が軽く頭を下げ合うと、客席から大きな拍手が。
その拍手を合図に、舞台の奥の扉が開く。
花束を持ってきてくれるのだろう。
私はバイオリンを置き、雪だるまの人形を片手に抱きしめる。
そして花束を持って来てくれた男性へと視線を向ければ―――――
「・・・ばか」
―――――今日も貴方が降り注ぐ。
END
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