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朝から雪が降り続き、外は一面の銀世界。
会社からの帰り道、オレはアパートの前にうっすら雪の積もり始めている段ボール箱があるのを見つけた。
その中から注意していないと聞き取れないほど、か細い鳴き声が聞こえてくる。
「…?」
段ボール箱の上の雪を払い、中を覗くとそこには厚手の毛布にくるまれた猫が顔をのぞかせていた。
真っ白い毛並みのキレイな猫。
「猫…」
ペット禁止にも関わらず、オレは猫を抱き上げてコートの懐に抱えて自分の部屋に戻った。
部屋に戻ったオレは、懐から猫を下ろし冷えた体を暖めて牛乳を与える。
最初は震えていた猫も、部屋が暖かい空気で満たされると、体の震えも止まり皿の中の牛乳も瞬く間になくなった。
「お前、どうするかなぁ…。ここペット禁止だし…」
お腹がよくなり膝の上で毛繕いを始める猫を抱き上げながら、オレはベッドに倒れ込む。
「とりあえず今日は寝るか」
1人と1匹は暖かさと疲れに引きずられるようにして眠りについた。
朝、オレが目が覚めるとそこにはもう猫の姿はどこにもなかった。
次の日。
オレは仕事が休みの日で、でも、特にする事もなく埋まるようにしてソファに座り、見るともなしにつけていたTVをぼんやり眺めていた。
ピーンポーン…。
玄関チャイムが鳴り、ドアを薄く開けると目の前には色白のすらりと背の高いキレイな顔の青年が立っていた。
「ボクは先日助けてもらった猫です。ご恩返しに来ました」
「……」
オレは無言でドアを閉めた。
ピーンポーン…。
ピーンポーン…。
何度もチャイムが鳴り、ドアスコープから外を見るとやっぱりさっきの青年が立っている。
「すみませーーん。ボクはーー、先日、助けてもらったーー……」
ドンドンドンドンっとドアを叩く音と共に、近所迷惑甚だしい声量にオレは慌ててドアを開け、青年を部屋の中に引きずり込む。
「あっ、信じてもらえましたか」
「いや、信じるとかじゃなくてそんなに大きな声出されたら近所迷惑だし」
「それはすみません。えっと、詳しくお話ししたいので失礼します」
そう言って青年はズカズカと部屋の中に入っていく。
「ちょっ!」
ソファの前のローテーブルは端に寄せられ、なぜか2人は膝を付き合わせてその場で正座。
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