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隊長の推察どおり、ニコルは迷っていた。
助けられるものなら助けたかった。
しかし自分たちの仕事は退治屋ではなくあくまでも警備。警護は可能でも、依頼人が心当たりのないロボット犯罪に巻き込まれているとすれば、この件は長期化するだろう。
いつか警備隊にも大きな被害が出るかもしれない。
対応困難な案件として警察に届け出て、安全な場所で保護してもらったほうが――。
「――あの、クルスさま」
頭の中のマニュアルと相談したニコルが口を開きかけた時、ミカエルが大きく体を震わせた。
対話のあいだに血の気が戻ってきていた白い頬にも、見てわかるほどの鳥肌が立っている。
「……大丈夫ですか?」
壁一面の窓を見遣った怯えた眼が、ニコルへ戻る。
「この感じ――ぼく、何度もこんな風に」
「具合でも悪く」
「違うんです」
ジューダスの問いかけに首を振って答えた顔は、激しく引きつっていた。
「今みたいにひどい寒気がする時、決まってやつが近くにいるんです」
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