起点

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3 days ago, 07:05p.m. 「今さら夜更かしするなとは言わんが、また寝坊なんかすんなよ」 「わかってる」 苦笑に頬を緩ませるミカエルは、倉庫の前で別れたローレンス、トーリと逆の方向に歩き出した。 駐車場の隅の植え込みに立て掛けていた自転車に跨がり、ペダルを踏む。 今日は毎月欠かさず購読しているコミックの発売日。 自転車に乗って走る10キロメートルあまりの寄り道も、苦ではない。 前照灯を点けた車で混み合う道路脇を走り続け、ようやく懇意にしている本屋に着いたミカエルはガラス張りのドアを開けるが早いか、 「ある?」 「取っといたぜ、ミカエル」 店のカウンターで、髭面の男が手にした雑誌を振ってみせた。 「今日は遅かったな」 「残業だよ」 答えながら店員のバックに代金を支払い、手にしたコミックの表紙を見つめた。 筋骨逞しい頑健そうな青年が、苦悶の表情を浮かべている。 物語の展開を思うと、もう胸が苦しい。 『星間の旅人』シリーズ、第二部。 前回の第二話は、主人公のエル=エメラニダイが謎の異星人からの襲撃を受け、窮地に追い込まれるところで終わっていた。
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