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――ん?
皮膚が引きつるような寒気に身を震わせた時、固い何かに前輪をとられた。
「!?」
勢いよく自転車と共に宙返りして数メートル先の歩道へ落下したミカエルは大きく呻いた。ぶつけた膝と腿が痛い。
……何だよ、タイヤ……?
激痛をこらえながら起き上がって一息つき、自転車を見る。
路上のタイヤらしきものにつまずいた被害は予想以上にひどいもので、愛用の自転車はハンドルが曲がり、前輪のリムは変形してしまっている。フレームは無傷だ。
コミックを読む時間を修理に割かれてしまうと深いため息をつき、痛む膝をさすっていると。
視界の隅で、黒い塊が動いた気がした。
「……え……」
首をねじ曲げるようにして、夜道で蠢きだした黒いそれを、見つめた。
恐れに体が震え始める一方、異物の滑らかな動きに変に感心している。
タイヤ然とした物体の表面がべろりと剥がれ、突起物のある帯状のものがきちきちと軋みを立てて起ち上がる。
街灯の光を薄く帯びてゆらゆら揺れるその姿に、骨だけになったコブラみたいだ――と思った瞬間。
鞭のようにしなるそれが、前触れもなくミカエルに襲いかかった。
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