358人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
どうしたいのかわからない
女と手を繋いで登校するあいつを、友人たちが一斉にからかっている。
隣を歩く女は、はにかみ、満足そうに見えた。はやし立てられることに、快感を覚えているような、そんな表情。
大人しく、地味な雰囲気の女だった。天然パーマなのか、緩くウェーブがかかった量の多い黒髪が野暮ったい。スカートの丈も長く、いかにも優等生というイメージの女は、あいつには合わないと思った。
告白されたからって、なんでこんなのと付き合うんだよ。
そんなひどいことを考える自分を心の内で戒めた。
あいつが誰と付き合おうと自由だ。俺には関係ない。
十日後、女の髪の色が変わった。明るい栗色に染められた髪が、歩くたびにふわふわと動く。垢抜けた、と周囲が噂した。
その次の日、スカートの丈が短くなったことに気づく。
気づいてしまう自分が、わけもなく不気味だと思った。
二十日後、女は化粧をするようになった。
そして、手を繋ぐだけだったのが、あいつの腕にすがりつくようになった。
二十日前と別の女に見えたが、間違いなく同一人物だ。
色気のかけらもなかった女は、リップがぬらりと光る唇を妖艶に微笑ませ、上目遣いであいつを見る。
最初のコメントを投稿しよう!