令と功

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令と功

「泉!今日も寒いね」 令はすぐ近くに兄の功と一緒に暮らしている孤児仲間だ。 彼女は俺より年齢がおそらく下で、俺のことも兄のように慕ってくれている。 「令いい子にしてたか?今日はいい知らせがあるんだ。」 「わかってるよ、泉の16歳の誕生日でしょう?ちゃんと贈り物用意したんだから」 そういうと令は後ろ手に持っていたものを差し出してきた。 「これ、砂浜で集めて作ったんだよ。きれいでしょ?」 キラキラと光るそれは、海辺に打ち上げられたビイドロの欠片を磨き上げ、 紐に通した首輪だった。 「すごいじゃないか。こんなに沢山のビイドロ、集めるの大変だったろう。」 「大丈夫だよ。功にいにも手伝ってもらったんだ、 だからこれは二人からの贈り物なの。 つけてあげるね」 ふわりと柔らかい笑顔。 俺に近づいて首輪を背伸びしてかける令の漆黒の髪が俺の頬に触れてサラリと流れる。 俺は不覚ににも頬が染まっていることに気が付いた。 (妹みたいな子に何赤面してるんだよ。俺は) 赤くなった顔を手でかくしながら、俺は動揺を隠すように告げた。 「ええっと、功は何処にいるんだ?御霊が肉を調達してきてくれたから、 今日は一緒に夕餉を食べよう。」 「うれしい!お肉なんていつぶりかなあ。功にいも喜ぶよ。」 令の笑う顔はどうしてこうも美しいのだろう。 俺は首に下がった首輪のビイドロをつまみながら、冷静さを装っていた。 「泉!きてたのか。すまないな、丁度、漁にでてたんだよ」 そういうと魚の入った網を持った功がかえって来た。 彼は海で魚を捕って販売し、僅かながら生活費を稼いでいるのだ。 「功、いいニュースだぞ。肉だ。」 「なに!!肉だって。 そうか、お前の誕生日だから、御霊が奮発してくれたのか。」 功は破顔して答えた。 「魚ばっかりで飽き飽きしてたんだよ。お前の誕生日なのに悪いな。 かわりにお前の好物のエビが取れたから持っていくよ」 「悪いな、お前のところも大変なのに」 「気にするな、今日はせっかくの祝いの日なんだから、ぱあっといこうぜ。」 功も令も朗らかにわらって俺の両隣について 家に向かって歩き出した。
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