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だいぶ時間が経ち、慎治の緊張も解けた頃だった。
綾「ねぇ杏香?ウチのこと慎治君には話してあるの?」
杏「……えっと、和堂の家と栗生の家のことは。この家の話は…2人の許可なく話したくなかったから…」
誠「そうか…」
綾「ありがとう。気を遣わせたわね。」
杏「ううん。」
先ほどまでの楽しげな様子とは違う、何かありそうな3人の雰囲気に戸惑うが、何も言えず待つしか出来ない慎治だった。
綾「ねぇ、慎治君?」
慎「はいっ」
綾「杏香と私、似てる?」
慎「はい。怖いくらいそっくりだと思います。」
綾「ふふ。そうなのね、嬉しいわね。ありがとう。」
少し涙を浮かべた綾乃の背中にそっと手を添える誠一を見て、不安な気持ちになる。
綾「あのね、慎治君…あなたは杏香が選んだ人だから話しておくわね。」
慎「…はい」
綾「杏香は…私が産んだ娘ではないのよ。」
慎「え…」
と、杏香を見ると、少し困ったような顔で頷いている。
綾「びっくりよね?ごめんなさいね。」
慎「はい。あ、いえ…でも、え?そっくりですよね?」
綾「杏香はね、亡くなった妹夫婦の娘なの。私と妹の梨香は年子でね、よく双子と勘違いされるくらい似ていたから、杏香がそっくりでもおかしくないのかもね。
杏香が生まれて1年経たないくらいの時にね、妹の夫…杏香の本当の父親が病気になって入院してね、しばらくして、一時退院することになって、妹が迎えに行ったんだけど、その帰りにね…
妹が運転する車と大型トラックが衝突して、2人とも亡くなってしまったの…」
慎「っ!」
あまりにも衝撃的な内容に頷くことさえ出来なかった。
けれど、綾乃も誠一も杏香も慎治の反応はあまり気にせず、淡々と事実だけを伝えようとしているようだった。
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