第2章 フリーター・虎之助

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駅の構内に置いてあるフリーの求人誌。 その中に見つけた「コノミ書店」の求人募集。個人でやっている本屋。 本屋といったら駅ビルやショッピングビルに入っている大手書店が圧倒的に多い中で、 小さな個人商店はなかなか経営は厳しいだろう。 それでもバイトを雇おうとしてるんだから それなりに儲けがあるのかもしれないと踏んだのだが、まさか 探偵事務所などというとんでもなくめずらしい別業もしているとは・・   コノミ書店を後して駅へと向かう足取りは軽い。 時間つぶしもかねて駅前にある和を感じさせるシャレた作りのスタバに寄ることにした。 全面ガラス張りの、光あふれる2階のソファ席に寝そべるようにして座り、 ラテを飲みながら傾きかけた陽に染められたオレンジ色の空を見つめる。 仕事が決まったという安堵感を味わいながら、 レイトショーまでの間になにを食べようか考える。 たまには贅沢して一人焼肉にするか・・ 懐の安定が虎之助の食欲をかきたて、 同時に心に大きなゆとりという名の芽が吹いた。
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