105人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
古民家の前に立ったのは9時20分。
開店の準備があるから10時よりも前に出勤しろと言われたが、
具体的に何分前と指示されたわけではない。虎之助の感覚で40分前に来た。
ギリギリに来るのは性に合わない。
前のバイト先でも5分前に駆け込んでくるヤツが結構いたが、
余裕で職場に着き、着替えを済ませてからのんびりと缶コーヒーを飲むのが自分流。
だいたい25分か30分前くらいに出勤していたが、
弥生からは開店前の準備も仕事に含まれると言われていたので、
とりあえず初日は早めに来ることにした。
引き戸に手をかけると、開かない。
あれ?なんで開かないんだ?何度かガタガタと引き戸を動かしてみた。
その音に気付いたのか、弥生の声が家の中から聞こえた。
カーテンをシャッと勢いよく引く音に気を取られていると、
ガラスの向こうに弥生がぬっと立っていた。お互いガラスに顔を近づけていたので、
ビックリしてひるんだ虎之助は後ろに飛び跳ねた。
「おはよう、早いのね。いい心がけだわ。次からは勝手口から入ってちょうだい」
戸を開けた弥生はそのまま虎之助を引き連れて表に出ると、勝手口の場所を教えた。
最初のコメントを投稿しよう!