第3章 裏路地の小さな本屋兼探偵事務所

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古民家の前に立ったのは9時20分。 開店の準備があるから10時よりも前に出勤しろと言われたが、 具体的に何分前と指示されたわけではない。虎之助の感覚で40分前に来た。 ギリギリに来るのは性に合わない。 前のバイト先でも5分前に駆け込んでくるヤツが結構いたが、 余裕で職場に着き、着替えを済ませてからのんびりと缶コーヒーを飲むのが自分流。 だいたい25分か30分前くらいに出勤していたが、 弥生からは開店前の準備も仕事に含まれると言われていたので、 とりあえず初日は早めに来ることにした。 引き戸に手をかけると、開かない。 あれ?なんで開かないんだ?何度かガタガタと引き戸を動かしてみた。 その音に気付いたのか、弥生の声が家の中から聞こえた。 カーテンをシャッと勢いよく引く音に気を取られていると、 ガラスの向こうに弥生がぬっと立っていた。お互いガラスに顔を近づけていたので、 ビックリしてひるんだ虎之助は後ろに飛び跳ねた。 「おはよう、早いのね。いい心がけだわ。次からは勝手口から入ってちょうだい」 戸を開けた弥生はそのまま虎之助を引き連れて表に出ると、勝手口の場所を教えた。
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