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12時近くに探偵事務所の客を乱子と一緒に送り出した後、
さっそく虎之助は切り出した。
「弥・・じゃない乱子さん、ここの本を買いたい時って、
割引とかしてくれるんですか?」
「あら!もう読みたいのを見つけたの?いいわよ、いわゆる社割ってやつにしてあげる。 半額だと大きいから、200円引きでどう?」
630円の本なら430円か。悪くない。古本じゃなくて新品を安く買えるんだ。
虎之助はさっそく財布を持ってきますと声を上下させ休憩室から財布をもって来る。
ジャラジャラとした小銭から500円玉と、
小銭を軽くするために10円玉3枚を選び出し弥生の手のひらに乗せる。
釣銭を財布に入れてからカバーを取り出す。
シンプルだけど色合いがしゃれているコノミ書店のカバーをかけて、
自分の物となった真新しい本を、カウンターの引き出しにしまった。
その様子を見ながら弥生は穏やかな笑みを浮かべた。
「柳君を採用してよかったわ。
今までずっと一人でやってきて、仕事に支障はなかったけど・・
やっぱり一緒に働く仲間がいるっていいわね。期待してるわよ」
バシッと背中をたたかれて少しよろめく虎之助も、この職場が好きになりそうだと
年齢不詳の美人オーナーに照れ笑いを返した。
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