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「しかし──」
男は大げさにかぶりを振った。
ユイはまるで演劇を見ている気分だった。
これは、本当にあったことなのか──?
「残念ながら霧の正体は掴めなかった」
男の声は明らかに怒気を含んでいた。
「だが悪い事ばかりではない。一つわかったことがあった。首謀者の存在だ。これは自然災害ではなかった。奴らは意図的に爆発を起こし、霧を発生させたようだ。我々は、奴らに対抗しうる『何か』を造らねばならなかった。ただのロボットでは敵わない。より強力で意志を持った『何か』を──」
男は、ガラスの向こうへ視線をやった。
ユイももう一度中を覗き見る。
あれは意志を持っているというのか──
「カズオミ・ソノオ、我らが師は考えた。意志を持つ肉体……それはすなわち人類だ。ここから彼は一つの結論を出した。自らの意志を持つAIの開発が行き詰まっている今、人体を改造するしかないと」
ユイは勢いよく振り返った。
今、何て言った?
その両目をめいいっぱい見開いて見ても、男の表情は変わらない。
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