第四話

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『五月蝿い!五月蝿い!五月蝿い!! 誰も信じてないくせに! 俺は誰にも必要となんてされてない! 俺が居なくたって代わりはいくらでもいる!』 『そんな事ない! 僕達には主が必要だよ! 他の誰でもない! 主でなきゃダメなんだ!』 『そうだ! だから出てきてくれ!』 『嘘吐き! 俺はもう誰も信じない! お前達を許さない!』 『主』 『もう何もかも終わりだ』 刃が肉を断ち深々と胸に突き立てられる。 血が服に染み込み溢れては床を汚していく。 膝から崩れ落ち身体は冷たい床に叩き付けられる様にして 倒れた。 冷えていく身体と生温かい血の感触。 頬には一筋の涙が伝い急速に目から光は失われていき そのまま閉じていった。 中から聞こえた音に外にいた者達は扉を破ろうとする。 やっとの思いで破った時には既に事切れており 青白く冷たくなった身体が横たわっていた。 『そんなっ!』 『………嫌だ 嫌だよ! そんなのってないよ! 置いてかないで!』 『俺の所為だ 俺があの時ちゃんと伝えていれば!』 『主様 目を覚まして下さい また毛並みを整えて下さい 私の毛並みを梳くのが好きだと言って下さったでは ないですか』 『小狐丸 加州 主から離れよ』 『主様!』 『主!』 『小狐!加州!』 『あぁぁぁぁぁ!!!!!』 空を震わせ叫ぶ。 その声は酷く胸を裂く様に強い悲しみが籠っていた。 誰もが力無く膝をつき茫然とする事しか出来ない。 涙がポロポロと頬を伝い床を濡らしていった。 何故か無くしたはずの心が酷く軋んだ。 有り余るほどの痛みに思わず目眩がして身体が 傾いた。
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