第五章

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それから一ヶ月経つ頃には本丸は賑やかになっていた。 あの不思議な夢もあれっきり見なくなった頃には すっかり慣れてしまい呼び方が変わっている者もいた。 「鶴さん! また悪戯したね!」 「驚きの提供だ!」 「鶴丸殿!」 「おぉ一期か」 「貴方と言う方は! 五虎退を泣かせましたね!」 「いやいや! あれは事故だ! 泣かせるつもりじゃなかった!」 「お覚悟!」 「おっと! あっ主! それ以上そっちに行くな! そこは不味い!」 ズボッ! 「あっっっ」 ドスン!!!! 「主!?」 「落とし穴か よくもまぁこれだけ掘ったものだ」 「大丈夫か? だからそっちに行くなと言ったろ?」 「そもそも庭に落とし穴を掘るな 俺だから良かったものの男士が下手に落ちたら折れるぞ? とりあえず一期と光忠の雷を受け止めて来い」 「鶴~さ~ん~!」 「鶴丸殿!」 「あっっっ」 ゴスン!!!! 「主 今 引き上げますので私の手に捕まって下さい」 差し出された手に捕まると軽々と持ち上げられた。 上に上がると軽く服を叩き土を払うと落とし穴を見て 大きく溜め息を吐いた。 「蜻蛉切ありがとう これ埋め直すの手伝ってくれるか?」 「もちろんです しかし鶴丸殿も凝りませんな つい先日 長谷部殿の雷が落ちたばかりなのに」 「鶴丸は悪戯が趣味なんだ 危ないから止めろと言った所で止めんだろう」 「しかし誰かが怪我をしてからでは遅いのですよ?」 「対策を考えなきゃな」 「いったい誰ですか! 私達の可愛いお小夜の柿を食べたのは!」 「宗三と江雪の雷も落ちそうだな」 「そのようですな」 穴を二人で埋め戻しながら盛大に溜め息をついた。 『鶴丸国永』は友好的ではあるが悪戯が過ぎる。 「驚きの提供」と称して何かと仕掛けてくるが基本その 被害に遭うのは粟田口の短刀達や伊達組だ。 おかげで毎日が騒がしい。
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