第壱章

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「此処は? 落ちてたはずなのにいつのまにか家の中だし」 「よかった 目が覚めたんだね?」 「誰? 不審者?」 「発想が極端だね 僕は燭台切光忠 君はこの本丸の庭に倒れてたのさ」 「そっか それはお手数をおかけしまして」 「そんな事ないよ それにそんなに畏まらないで? 君は今日から僕達の主なんだから」 「ごめん ちょっと状況が理解できないんだけど?」 「そのうちわかるよ とりあえず此処を案内するよ 動けそうかい?」 「平気 一人で立てるよ」 差し出された手を一瞥するとゆっくりと立ち上がる。 立ち上がって見ると視線が高くなっていた。 後で鏡を見て今の自分の姿を確認しよう そして性別についてと事故の事は頭の片隅に置いておこう と心の中で呟く。 燭台切光忠と名乗った男の後ろをついて行く事にした。 右も左もわからない。 見たことのない場所だ。 一つ一つ丁寧に教えてくれているが引っかかる事があった。 「一つ聞いてもいいか?」 「なんだい?」 「これだけ広い家なのに貴方以外の人に会わないのは 何故? いくらなんでもおかしい気がするんだけど?」 「昔はたくさん仲間が居たんだ でも今は僕だけになってしまった 主が居なくなってしまったからね」 「なるほど つまり俺は代わりって事か」 「そう言われてもしょうがないかな? まぁ僕もこの本丸の前の主の事は殆ど覚えてないんだ 殆ど部屋から出てこない人だったから」 「それで? いったい何から始めればいい? 掃除?洗濯?料理?」 「えっっっ?」 「俺がやる事だよ まだ納得してない事やわからない事だらけだけど君の事 ほっとく訳にもいかないからさ 俺は奏」 「やっと名前教えてくれた 奏ちゃんだね とりあえず鍛刀してみようか?」 「鍛刀?」 首を傾げながらおうむ返しに聞くと手を引かれて庭に出た。 庭の片隅に小屋がありその中に入ると様々な道具が転がっていた。 前に本で見た刀鍛冶の道具に似ている気がする。 嫌な予感はしていたが刀を造れってか? 顔が引きつっている気がする。 とは言え今更になって辞めたとは言えない。 そんな事にも気付かず説明している光忠。 何処か生き生きしている様に見えた。
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