厄介なお客様

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清孝は難しい顔をしている。 「今回は商売繁盛のご祈祷だそうですね」 「ああ、もう売れてんじゃんかって言いたいんだろ、まあ実際そうだしね」 ボソッ 清孝が何かを呟いた。 聞こえましたよ、清孝さん!今、小さい声で「黙れクソガキ」って言いましたよね。 「ん、何か言った?」 「いいえ、ではなぜご依頼されたのでしょうか」 「それがさ、今日してもらいたいのはお祓いなんだよ というのも、ここ2か月、いやもっと前からかもだけど、 男みたいなのが視えてずっと何か言ってくんだよ! まじ寝れねぇんだって」 「そうですか、それは大変ですね まずはお話から聞きましょう」 その人の話によると、2か月ほど前から男の霊が話しかけてきて、最近では言葉がはっきりと分かるほどらしい。 「どうしよう、まじ助けてお坊さん!」 「宮司です。それでは、その男の方の言い分も聞いてみましょう」 「は?」 これが霊が視えるからできる清孝流のお祓いなのだ。 「さあ、出てきてください」 空気が変わる。重々しく暗い空気だ。 「うわ、出た!」 「あなたのお名前を教えてください」 ((……)) 「では、なぜこの人についているんですか?」 ((…同じ)) 「何が同じなんですか?」 ((手柄…欲しい)) 霊の男は軍服を着ているようだ。 「なるほど。あなた、最近戦争について扱う資料館などに行きませんでしたか?」 「あ、ロケで…2か月前だ!」 「そこで付いてきてしまったんですね」 あなたの芸能界で上に登りたいという精神とこの男の戦いで手柄が欲しいという精神が結びついてしまったと」 「待て!なんでこの男と一緒なのか分かんねえけど、上に登りたいって思って何が悪いんだよ」 「悪いんじゃありませんよ、原因がそうだと言っただけです」 2人の気持ちが昂ぶるにつれて、どんどん空気が重く冷たくなっていく。 後ろに待機していた琴葉は焦っていた。 まずい!あの人の魂がどんどん黒く歪んでいっています。 それに男の負の気に同調していって、このままでは危ないです!
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