厄介なお客様

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「なんでもやってかなきゃ残れねーんだよ、俺は上に登りたい、欲を出して何が悪い!?」 ((手柄が欲しい…お前と同じだ)) 黒いモヤモヤが大きく濃くなり、今にもその人を飲み込みそうだ。 「落ち着いて下さい」 もう見てられません。 「清孝さん、私に任せてください!」 「え、琴葉?」 ああ、清孝さんには知られたくなかったです。 「…あなた達は、本当に同じですか?」 「は?」 「今、一緒になって後悔しませんか? お互い大事な人と離れていいんですか? あなたは恋人が、あなたは奥さまがいらっしゃるんですよね、奥さま、悲しんでらっしゃいますよ」 「琴葉…あなた何が視えてるんですか」 琴葉は微笑んで続ける。 「あなた達は、本当はすごく綺麗で繊細な心をお持ちです。 そんなところが引き合わせたのでしょうね。 あなたはそろそろ奥さまがお迎えにいらっしゃいますよ」 2人の胸に手をかざす。 すると、奥深くでくすぶっていた小さな光が、覆っていた黒いモヤモヤを消すように大きくなっていく。 ((…みほ)) 空気が変わる。暗く重たいものが晴れていく。 「長い間、お疲れ様でした。奥さまをお大事になさってください」 ((ありがとう)) 霊の男は、静かに消えていった。 「大丈夫ですか?」 「えっと、何があったんだ?」 「余計なお世話かもしれませんが… あなたはもっと周りの人をよく見てください あなたが1人で戦っていないことがきっと分かるはずです 同じ志を持っている人は案外身近にたくさんいますよ」 「…はい」 「頑張ってたな、琴葉」 「清流ー!どうしましょう、清孝さんびっくりしてました、私あの人たちを見ていたら我慢できなくなって…清孝さんに嫌われたらどうしよう、やだよ、もう捨てられるのやだ…」 清流は琴葉をしっかり抱きしめて頭を撫でてやる。 「大丈夫だ、あの清孝だぞ すごいですね、琴葉って褒めてくれるだろ」 「ほんと?嫌いにならない?」 「ああ、大丈夫だ」 清流の腕に抱かれて子供のように泣く琴葉を、清流が愛しむ目で見ていたのは、こっそり見守っていた清孝しか知らない。
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