鉄火場のディザイアラス

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「おう、兄ちゃん。誰に賭けるんだ?」 エントリーの為に賭場に向かうと、掛け屋のおっさんが話し掛けて来る。 「俺は賭けるつもりはねーよ」 「あん?じゃあ何だってこんなとこに?」 おっさんは怪訝な表情で、俺の足から頭までをジロジロ見て来た。 「いや、ははっ、まさか出場するとか言わねーよな?」 「何か問題でも?」 「いやいやいや、兄ちゃん流石に何でも無謀過ぎるだろう?見たとこ全身生身で無改造(ノーマル)じゃねーか!」 「はぁ、まぁ…」 俺はポリポリと頬を掻き生返事で返す。 「身体改造しまくってる全身兵器みたいな奴らと闘うんだぞ!?触れただけで生身なんざ豆腐の様に崩れちまうよ!」 おっさんは真剣な顔で「自殺行為だ!」っと心配してくれている様だ。 「おっし間に合った!オラどけっ!無改造(ノーマル)!」 俺は突然現れたガラの悪い男に、ごっつい腕で肩を引っ張られた。 「…いや、悪いがその兄ちゃんで賭けは終了だぜ」 おいおいおっちゃん、そんなこと言ったら俺が絡まれるだろ!? 「あぁっ?おいどうしてくれるんだ?お前ぇのせいで賭けられなかったじゃねーか!」 ほらな、またもやごっつい腕で胸倉を掴んで来た。 改造パーツを生産している大手メーカー…アストリア製の戦闘モデル。 普通なら肩を掴まれた時点でミンチになってたはずだが…、余程使いこなしているのだろうか、今も服すら破れていない。 「俺は賭けに来たんじゃない、エントリーに来たんだ」 「は?お前イカれてんのか?無改造(ノーマル)で出場して生きて帰られるわけねーだろ!」 ガラの悪い男は、見た目通り下品な笑いをあげる。 「いやいや、人体の神秘ってやつ?あながちそうでもないさ」 俺はため息混じりにははっと力無く笑って見せた。 「はっ!こりゃ傑作だ、俺の腕ですら動けなくなってんのに何言ってんだ?見せてみろよその人体の神秘ってやつをよ!」 「おっちゃん、今コイツが言ったこと聞いたよな?」 俺は既に足が地に着いていない状態だが、ガラの悪い男を指差して賭け屋のおっちゃんに声掛ける。 「お、おお。人体の神秘を見せろって言ったな」 おっちゃんは状況が把握できず狼狽えながら答えた。 俺はおっちゃんの反応を確認すると、胸倉を掴んだごっつい腕に両手を挟む様に添え短く息を吐く。 「ふっっっ!」 バギャッ!!! ガラの悪い男の腕は、肘の部分から見事にバラバラになった。
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