1人が本棚に入れています
本棚に追加
「おう、兄ちゃん。誰に賭けるんだ?」
エントリーの為に賭場に向かうと、掛け屋のおっさんが話し掛けて来る。
「俺は賭けるつもりはねーよ」
「あん?じゃあ何だってこんなとこに?」
おっさんは怪訝な表情で、俺の足から頭までをジロジロ見て来た。
「いや、ははっ、まさか出場するとか言わねーよな?」
「何か問題でも?」
「いやいやいや、兄ちゃん流石に何でも無謀過ぎるだろう?見たとこ全身生身で無改造じゃねーか!」
「はぁ、まぁ…」
俺はポリポリと頬を掻き生返事で返す。
「身体改造しまくってる全身兵器みたいな奴らと闘うんだぞ!?触れただけで生身なんざ豆腐の様に崩れちまうよ!」
おっさんは真剣な顔で「自殺行為だ!」っと心配してくれている様だ。
「おっし間に合った!オラどけっ!無改造!」
俺は突然現れたガラの悪い男に、ごっつい腕で肩を引っ張られた。
「…いや、悪いがその兄ちゃんで賭けは終了だぜ」
おいおいおっちゃん、そんなこと言ったら俺が絡まれるだろ!?
「あぁっ?おいどうしてくれるんだ?お前ぇのせいで賭けられなかったじゃねーか!」
ほらな、またもやごっつい腕で胸倉を掴んで来た。
改造パーツを生産している大手メーカー…アストリア製の戦闘モデル。
普通なら肩を掴まれた時点でミンチになってたはずだが…、余程使いこなしているのだろうか、今も服すら破れていない。
「俺は賭けに来たんじゃない、エントリーに来たんだ」
「は?お前イカれてんのか?無改造で出場して生きて帰られるわけねーだろ!」
ガラの悪い男は、見た目通り下品な笑いをあげる。
「いやいや、人体の神秘ってやつ?あながちそうでもないさ」
俺はため息混じりにははっと力無く笑って見せた。
「はっ!こりゃ傑作だ、俺の腕ですら動けなくなってんのに何言ってんだ?見せてみろよその人体の神秘ってやつをよ!」
「おっちゃん、今コイツが言ったこと聞いたよな?」
俺は既に足が地に着いていない状態だが、ガラの悪い男を指差して賭け屋のおっちゃんに声掛ける。
「お、おお。人体の神秘を見せろって言ったな」
おっちゃんは状況が把握できず狼狽えながら答えた。
俺はおっちゃんの反応を確認すると、胸倉を掴んだごっつい腕に両手を挟む様に添え短く息を吐く。
「ふっっっ!」
バギャッ!!!
ガラの悪い男の腕は、肘の部分から見事にバラバラになった。
最初のコメントを投稿しよう!