鉄刀鉄美

2/2
前へ
/8ページ
次へ
あぁ、とうとうこの日が来てしまった。 私はこのバトルアリーナの景品…。 優勝した者へ贈られるトロフィーの様な物。 人間達からすれば、私は確かに美しいのだろう。 だが、私からすれば何の設計も無く生まれてくる人間は神秘的で、さらには私の様な機械を創り出したり、道具を作ったりと生み出す事に長けている。 設計通りにただ美しいだけ(・・)の私にとっては人間達の「それ」はただただ存在が美しく、そして遠く儚くかつ眩しく輝く。 神秘的な身体を改造し、肉体を捨て去る彼らを私は理解できない。 そんなイカれた人間達のままごと人形になるのかと思うと、思考回路が今にも焼き付きそうだ。 どうせ所有物になるのであれば、あの「彼」の様な美しい状態のままの人間がいい。 だが、それは無理な話。 今回のアリーナは武器使用禁止、己が身体のみで闘わなければならない。 無改造(ノーマル)な彼が参加するなど、到底あり得ない事だ。 はぁ、私はまた彼の事を考えている。 自身の所有者を選べない被造物に、思考する機能など不要ではないか? 私を造った人間は何を考えて私に、この様な苦痛を望んだのだろか。 そう考えただけで、創造主の頭をカチ割り中身を吟味してみたい衝動に駆られる。 だがそれもまた無理な話だ。 私にはある3つルールを元に、厳格な行動原理がプログラムされている。 私がこうして逃げ出さず座して思考するに留まるのも、そのプログラムのせいだ。 いや、待て、本当にそうなのだろうか? 人間の命令だからと私は全てを受け入れていたが、それに関して思考した事がなかった。 実際に今ここに座っていろと命令されているが、それ以上の行動をとった事がない。 今も思考出来ていると言う事は『命令に反さない限りの行動は許されている』と見て間違いないだろう。 では、どこまでが許され、どこまでが許されないのか、次はそこを論点に思考してみよう。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加