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説得
今更ながらコートを着込み、震えそうな体にもう少しだけと鞭を入れて、ランバートはそっと小屋の戸を開けた。
中は相変わらず暗く、時々暖炉の火が爆ぜる音だけがしていた。
「どうですか?」
そっとオリヴァーに近寄れば、彼はいくぶん穏やかに頷いた。
「安定していますよ。薬の投与が早かったのが幸いしましたね」
少し穏やかになった様子を、ランバートも遠目に見た。
意識はまだある。痙攣は多少あるのかもしれないが、強い反応は起こっていない。衣擦れ一つで呼吸が困難になるほどの痙攣を起こす毒と、必死に戦っているようだ。
「ランバート、貴方も休みなさい」
「ですが…」
「私はこの後、心配のない所まで側についています。その後は第四師団に任せて、同じ場所で仮眠を取ります。貴方も疲れているし、何よりも冷えています。温かくして、十分に寝てください」
触れられたオリヴァーの手が温かい。それだけ冷えているのだろう。ランバートは大人しくその言葉に従った。
小屋から出て、シウスの様子をラウルにも伝え寝るようにともう一度促して離れた。
そして、仮眠用のテントの一つに入り毛布を引っ張りあげて包まる。
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