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★ファウスト
ランバートを抱いて横になり、体が温かくなるまで隣にいた。
静かな寝息を立てる頬にほんのりと赤みが差していくのを見て、ファウストは体を離す。頬を一つ伝った涙が意地らしくて、指の腹で拭ってからテントを出た。
外は未だに落ち着かなかった。いくつかある救護テントの中では複数の影が未だに動いている。解放された女性達が、落ち着かなくしているようだ。
「ファウスト様」
第四師団の隊員が近づいてきて、近況を伝えていく。
「女性達の怪我はたいしたことはありません。連れられていた赤子も、女性達が守っていたので大事になるような子は今の所いません」
「そうか」
「数人、妊婦がおります。聞けば乱暴などではなく、元々旦那がいて、そことの子だと言います。産婆は流石にいないので体調を把握できませんが、当人達は大丈夫だと言っています。女性達のテントの周囲に隊員を配置し、何かあれば直ぐに対処できるようにしました」
「ご苦労だった」
労いの言葉に頭を下げた隊員が、また足早に去って行く。
女性達が解放されたのは意外だった。おそらく小屋の周囲から人をおびき寄せる為の餌に使われたのだろう。
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