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「ここいらの奴らがしたことを、俺達は許せない。帝国に従う事なんて、まっぴらご免だ。けれどこの状況になって、誰にも助けを求められなかった。せめて女性達や子供だけでもって思ったけれど、そこを狙われてどうすることもできなくて」
膝の上で悔しそうに拳を握るフェレスは、俯いたままだ。
ファウストも考えてしまう。何も知らなかったし、過去を知ろうとしなかった。もっと早く手をつけられれば良かったのだろう。なのに…。
「親父達が戦った理由が分かった。同じ気持ちだったんだ。子供や女性を守って、勇敢に戦った」
「エルの男は勇敢な戦士だと聞いている。その血を継いでいるんだ、お前達も勇敢だ」
「…情けない。森で起こった事を、俺達が解決できないなんて」
「そういう事もある。勇気だけではどうにもならない事もある。数の利というものは、大きい。それに、敵はお前達の裏をかいているだろ」
フェレスは納得していないまでも、ファウストの言う事には素直に理解しているように頷く。
「女性達を頼む。俺は男達を説得して、帝国に下る」
ぽつんと呟いたその言葉に、力がない。ファウストは少しだけ距離をつめた。
守るようにしていたグレーの狼が頭を上げたが、ファウストを見て再びフェレスを見つめた。
「下れとは言わない。住み慣れた場所を追われる辛さは、俺も知っている」
「え?」
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