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「…幼少の頃、俺は母と弟妹と過ごしていた。それが、母が亡くなって俺だけが父方に引き取られた。住み慣れた場所を追われ、牢獄のような場所で過ごしていた。だから、悔しさも辛さも寂しさも分かるつもりだ」
ぽつりと呟くように、ファウストは伝えた。
昔なら言わなかっただろう事だが、今は平気になった。ランバートが、平気にしてくれた。過去は辛く、未だに少し痛みもあるが、あくまで過去になった。今ではないと、はっきりと感じられる。
「一時的な保護だ。この森の安全と、こんな事をしでかすバカを叩きのめす。それまでの間、住む場所を変えてもらいたい。ここにいる者も場所を分けない。全員、一つ所で受け入れる」
「本当か!」
「その為にシウスは頑張っていた。陛下も、その側近も受け入れる場所を用意している。東の地では当たりが強いようだが、王都近辺では過去の悲劇もあまり語られていない。ちょうど、住み心地のいい新しい町がある。住民も多くはない農業地区だ。そこで、森に戻るまでの間作物を育てて過ごしてみないか?」
「…住む場所は」
「提供する。職業支援もして、国の民として保護も保証もしていく。農業以外でも、やりたい仕事があれば相談に乗るそうだ。困った事があれば、騎士団のシウス宛てに送るといい。あいつは陛下と直接話ができるからな」
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