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いきり立つ少年達のこの怒りが、エルの怒りなのだとはっきり伝わる。そして、これに対しては何も言い返せない。
ファウストだって話を聞いて、どれほど惨いかと息を詰めたのだ。
だが、信じて貰わなければならない。このままでは本当に、多くの人が他国へと売られていく。そして、その金がテロリストへと渡っていく。
ここにいる彼らだってどうなるか分からない。すすんで加担する者はなくても、加担せざるを得ない状況に陥る事はある。それに、戦いとなればエルの一族が滅ぶ可能性すらある。
ファウストは何かを言おうとした。だが、フェレスはその前に立ってそれを制した。
「セヴェルスが、約束してくれたんだ」
「フェレス…」
「セヴェルスは言ってくれた。絶対に、森に戻すって。私たちが森に戻れば、遊びにくるって」
息巻いていた少年グループも、少しだけ声を小さくする。そしてファウストは、どこかほっとした。
シウスはここに戻る事を恐れていた。だが、今はもう恐れないのだろう。彼もやっと、痛みを癒やして故郷へ来られるのだ。
「セヴェルスは、帝国で仲間と使命を得たと言っていた。そうした仲間や主は、私たちを迫害したりはしない。この人達は昨夜、私やリスクス、攫われた女性や子供を守って戦ってくれた」
「女性達が見つかったのか!」
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