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「シウス様…」
「怪我は良いのか? 辛い事をさせてすまぬ。私はもう平気じゃ。私の上に死はもうない。そうであろう、オリヴァー?」
問えば困った顔でオリヴァーが頷く。手に水の入ったグラスを持ち、それをシウスへと手渡した。
「毒は体外へと排出されています。毒を受けて二四時間以上が経過しておりますので、後は体に残る僅かなダメージが回復してくれれば今まで通りに動けましょう」
「左様か」
オリヴァーは柔らかな雰囲気ではあるが、嘘は言わない。酷な事もわりとあっさり当人に申告する。そういう男の診断は信用できる。
「ラウル、寝ておらなんだか?」
「え?」
「隈ができておる。それに、疲れた顔をしておるよ」
目の下に薄らと浮かぶ黒を指の腹でなぞりながら、シウスは心配そうに声をかける。
一瞬誤魔化そうとしたのだろう表情をラウルは浮かべたが、直ぐにそれを止めて頷いた。無意味であると分かったのだろう。
「怖くて、辛くて、眠れませんでした。騒がせればシウス様の命が危ぶまれるのも分かったので、側にいる事もできなくて…。自分が情けないです。こんな時、ランバートなら医学の知識もあって役に立てるのにって」
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