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小さな呟きが、こんなにも嬉しいとこの子は分かっているのだろうか。そうまで思ってもらえる事が幸せなのだと、感じてくれているだろうか。
シウスは幸せに笑みを浮かべ、滑らかな額にキスをした。
「アレの様になっていたら、私はそなたを選んではおるまいよ」
「え?」
「ラウル、辛い思いをさせた。苦しませてすまぬ。だが、情けないなどと思うな。確かにランバートは知識も豊富で出来る事に幅がある。だが、アレは自らを傷つけるようにそれらを得たのだ。そのような生き方、そなたにはしてもらいたくない」
どこまでも白く、どこまで無垢で。そこに曇りや影がないとは言わない。この子の中にも闇はある。気にしている事もあると知っている。
それでも共にある時間は、穏やかに明るく、そして柔らかな彼でいてもらいたいのだ。
「ラウルがラウルであることが、私にとっては何よりも愛しく、何よりも尊い。だから、そう自らを傷つけるな。今後はこのような事がないよう、私もまた精進する。故に、此度の事は許せ」
腕の中で震えながら頷いたラウルが、彼らしく愛らしい笑みを浮かべた。
「シウス様、ご気分が落ち着いているのでしたらお会いしたいと言う者がおります。いかがなさいますか?」
「うむ、会おう。今の状況も知りたい」
「畏まりました。背もたれを作りますので、少しお待ち下さい」
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