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双子の弟、エペーオスが不安を瞳にありありと浮かべながら問う。二人は項垂れ、思う不満をシウスへと向けた。
「私たちは森が好きです。ですが、若い私たちには帝国は誘惑の多い場所であることも分かっています。怖いのです、セヴェルス様。町で暮らし始めた者が、森に帰る事を拒んだらどうなるのか。仲間を、失ってしまうのか」
少年達だからこその葛藤と恐れ。それにフェレスとリスクスは少し驚いていた。
年長の彼らはここの生活を当然と思っているのだろうが、少年達はまだそこまでは思えないのだろう。
シウスは穏やかに微笑み、そして思うところを正直に話した。
「その選択も、しても良いと思っておるよ」
「森を捨てるのですか?」
「捨てるのではない。だが、人生において多くの経験もまた良いものであると思う。町で生きる事を選んだからと言って、それが決別ではないのだと私自身が今感じておる。森は寛大じゃ。此度戻った私に、精霊達は『おかえり』と言うてくれる。だからこそ、許されたと思うのじゃ。拒まれてはおらぬと思うのじゃ。一度離れたとしても、懐かしい故郷である事は変わらぬのじゃよ」
そして、昔と同じ『セヴェルス』の名で呼んでくれる友がここにはある。
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