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ラウルの肩を引き寄せ、驚きながらも体勢を崩したその体を抱きしめる。柔らかな髪に鼻先を近づけると、穏やかに笑う事ができた。
「愛しい…子?」
フェレスが固まっている。双子も同様だ。そして腕の中のラウルは恥ずかしさに顔を真っ赤にしている。
「おや、言うておらなんだか。私はこの子を生涯の伴侶と決めておる。今年で十八とまだ幼いが、後二年も我慢すればもらい受ける心づもりじゃ」
「シウス様!」
ラウルが必死に何かを言おうとするが、シウスはそれらを無視するつもりだ。
申し訳ないが、この一点に限っては我が儘を押し通そうと決めたのだ。心が離れてしまわぬ限りは、決して離さないと決めたのだ。
ラウルがいるからこそ、生きねばと踏ん張れたのだ。
「良いではないか、ラウル。私は隠すつもりなどない。誰に気兼ねもせぬ。むしろ見せつけておきたいくらいじゃ。他の虫など寄り付きもせぬほど、他を牽制しておきたい」
「あの! …恥ずかしいです…」
小さな声でそう言ったラウルに、シウスは大いに笑った。
「セヴェルス、本当に茹だってしまうよ。さぁ、ウリクセース、エペーオス、お前達は他の少年達に伝えてあげなさい」
「「はい」」
双子は最後まで目を白黒させながらも小屋を出て行く。そしてリスクスは未だに心をどこかへ飛ばしているフェレスの頭を一つはたいた。
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