奪還(シウス)

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 リスクスとフェレスが焦ったように言うのも無理はない。シウス自身も驚いている。  巻紙は森の地図だった。いくつかの目印になる木を中心に、その周辺を書いたもの。川辺を拠点としたそれは、実に立派なものだった。 「第二師団は斥候、陽動、追尾なんかの遊撃担当。ついでに周辺の地形を把握する技術も重要ってね」 「いくつかの木に目印とする色の布を縛り付けてあります。周囲の様子を書き写し、また一定の距離を行って目印をつけてです。その間に建物や川、地形的な特徴があればそれを書き加えて後で合算させてあります」  この地図には川も、今いる小屋も書き加えられている。僅かにある平地、洞窟や特徴的な岩の形などもある。 「川辺からこの小屋までは二キロ。この小屋から一番近い砦までは四キロあります」  地図の上をなぞるように、ウェインが説明をしていく。小屋から先はほぼ森になっているが、その先に何やら建物群があるようだった。 「この小屋より七キロ先に、古い石積みの建物群があります。様子からして、古い城塞だったのではと思います」 「そのようなものがあったかえ?」 「…あったのだと思うよ。数百年も昔に、この森の中で隣国との争いがあったと、父様から聞いた事があるから」     
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