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「今回は私も相当ダメであった。皆の荷物となってしまったのだ。反省すべき点が多いのは同じじゃ。その中で、ラウルはとても良くやってくれた」
「ダメでしたよ?」
「では、あいことしよう」
クツクツと笑い、シウスはラウルを抱き寄せた。
背を撫でるその手がとても心地よくて、悔しさや辛さを溶かしていく。苦しさが溢れて、涙になって出ていった。
そっと力が緩まって、唇が触れた。薄い唇が柔らかく触れ、優しく甘やかしてくれる。変わらないシウスの優しさが嬉しく、そして少しもどかしい。
「ラウル?」
手を伸ばして、ラウルから触れた。
舌を這わせて入り込み、舌を絡ませるような少し乱暴なキスだった。でも、欲しかった。もっと触れて欲しかった。優しさではないもので求めて欲しかった。
ランバートと話をして、羨ましいと思ってしまったのだ。強く求められる事も、隣に堂々と立とうとする事も、それをファウストも尊重してくれることも。
分かっている、優しさや愛情のかけかたには違いがある。シウスは甘やかしたいんだ。
でもそれは子供だって言われているようで、いつまでも庇護の対象であるような気がして、隣に立ちたいのにそうはできなくて。
苦しくて、切なくて、泣いてしまう。深く唇を塞ぎ舌を交えながら、泣いていた。
「ラウル…」
「欲しいです」
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