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王都の西地区にある小さな屋敷に、この年の九月から明かりが灯るようになった。
白壁に青い屋根の小さな屋敷は長く人が住まないままになっていたが、そこにようやく住人ができたのだ。
荒れていた愛らしい大きさの庭は整えられ、生け垣も綺麗に整備されている。
ここには地方からこの九月に、皇帝カール四世の側近に異例の出世をした、若い政治家とその奥方が住んでいる。
「…やはり、東は急がなければならないね」
庭先のテラスに腰を下ろしたヴィンセントに、傅いた男が二人頷く。身なりのいい男達だが、その目に宿るものは一般人にしては鋭いものがある。
「接触はできそうか?」
「難しいでしょう。我らは外部の者、近寄りもしません」
「彼らは獣の声を聞きます。森は獣だらけ。俺達の動きも筒抜けになっているように思います」
「優秀な君たちが接触できないのだから、そういうことなんだろうね」
言いながら、ルシオ改めヴィンセントは肘掛けを指でトントンと叩いた。
「いかがいたしましょうか?」
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