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「何だよ」 「案外、楓太さんって勘が鋭いですね」 こちらに背を向けたまま颯が言う。 「え、勘じゃなくてもお前が初心でまだまだガキんちょってことくらいわかるだろ」 「そうじゃなくて」 颯が振り返る。色白の顔が真っ青に染まっていた。楓太の顔から笑みが消える。「どうした」 「日本(ここ)にもトム・クルーズはいたみたいです」 「どういうことだよ」 颯を脇に押しやってリビングへ目をやると、そこには自分達の部屋とは思えない程の光景が広がっていた。 観賞用植物は倒れ、ソファやテーブルなどそこらじゅうに番組や舞台、ライブの資料が散りばめられている。収納ボックスは全て中身を引き出され、キッチンまでも荒らされた跡があった。 ―誰がどう見ても、ここに空き巣が入ったことは明らかである。 「連絡」 やっとの思いで絞り出した声は掠れていた。そうだ、こういう緊急事態の時はいつも― 「颯、田代に連絡だ」
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