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「何も盗られていない!?」
思わず大声を出してしまい、田代は慌てて回りを見渡した。しかし、深夜のホテルのロビーに人はいない。
しばらく捜査にご協力ください、と警察はぶっきらぼうに言い、楓太と颯の二人は数日間のホテル暮らしを余儀なくされたのだった。
「一瞬焦ったけど、散らかっているだけで何も盗られていなかったんだ」
「楓太さんが大きな声でただいま、なんて言うから慌てて逃げちゃったんですよ」
「立派な防犯だ。結果、命は助かってる」
「結果論ですよ」
「つまらん喧嘩している場合か、二人とも」
田代に一喝され、楓太も颯も口をつぐんだ。
「社長には報告してある。まあ案外驚いてはなかったがな。このことは絶対に口外しないようにと」
「どうせマスコミが嗅ぎ付けんぞ」
「その時はその時だ。じきに犯人もわかるだろ」
「でもさすがにベランダには防犯カメラはついていませんよ」
颯のひとことで皆固まった。
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