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「なんすか、これ」
「それはこっちのセリフですよ、楓太さん」
脇に立っている田代が渋い顔をして睨んできた。
彼は楓太より年下だが、付き合いは長い。たまに見せるこういう態度に楓太は舌打ちしそうになる。
「この女優と付き合ってんのか?」
「付き合ってるわけないでしょ。つか、これドラマの打ち上げの帰りっすよ?俺らのほかにもまわりに人いっぱいいたんですよ?」
あの日は、主演をやったドラマがクランクアップしたので、ヒロイン役のこの若手女優と、スタッフを含む数人で打ち上げをしたのだった。
「じゃあただの冷やかしですね、社長?」
「まぁでも、しばらくは面倒だな。田代、局とお世話になっている記者さん宛にFAX頼む。コメントはいつもの通りだ。楓太、お前取材で何か言われても余計なことを言うなよ」
「わかってますって」
何年この事務所にいると思っているのだ。しかめっ面をしていると、あぁそうだ、と王が顔をあげた。
「楓太、お前に新しい仕事がある」
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