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アナウンスと共に、エレベーターが目的の階に辿り着いた。
―やはりここのフロアは最上階のようだ。
2405号室の前に立ち、大きな溜息をつく。これから待ち受けることを考えるとかなり憂鬱な気分になる。
鍵は持っているが、念のためインターホンを押す。
数秒待って、応答があった。
「はい」
「あのー、社長からの『仕事』で来た、立脇楓太ですけどー」
「ちょっと待って下さい」
プッ、という短い音がして通話が切れたのと同時に、ふう、と長めに息を吐き出した。
吐き終えるか終えないかぐらいの所でガチャリと扉が開き、焦ってよそ行きの表情を作ると、ドアの間から自分とそう歳の違わない男がこちらを見ていた。
「あ、どうも―」
「おはようございます。どうぞ」
小顔で、色白で華奢なこの男。
これが佐田颯との出会いである。
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