行きの電車

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行きの電車

 ガタンゴトンと揺れる中、彼女は無言だった。駅ではやけに楽しそうに受け答えをしていたのに、急に別人にでもなったかのようだ。  そして、その整った憂い気な顔に、私は声をかけるにかけられないでいた。 「――セイレイって、いると思う?」 「……セイレイ……?」  線路をなぞる音の合間に、唐突な質問。  何を言っているんだろうか。その四つの音に当てはまる単語といえば……。 「政令指定都市……?」 「精霊よ。草花とか水とかにいる、精霊」  ……まあ、今のは、私なりのボケだ。ずっと真剣な顔でいられるのは、なんだか居心地が悪かったから。結果は言わないでおくけど。 「……よくわからないんだけど」 「そのままの意味よ」  ……それがわからないから訊いたのに。  このままでは何も進まなそうなので、適当に合わせてみる。 「いるわけないでしょ、あんなの。おとぎ話とか、創作の中の存在よ」  そう言って、ちらりと横に座る少女に目をやると、立ち上がった瞬間だった。走行中にわざわざ立つなんて、何を考えているんだか。 「そう……。私は――」  私の前でくるりと回って、 「――私は、いると思うわ」  いつの間にか開けたコートの前面からセーラー服を覗かせた。
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