行きの電車

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「……もしそんなものがいるなら、もっと面白いセカイになってるんじゃない?」 「……そうね。でも、精霊ってそういうものじゃない?」  本当に会話になっているんだろうか。二人っきりでいるせいか、少女じゃなくて自分がずれているような気すらしてくる。この車両に他の乗客が来て、この少女に白い目を向けてくれればすぐにわかるのに。  そこまで考えたところで、この窓の外を眺めている異国風な少女のことを、未ださっぱりわかっていないことに気づいた。 「ねえ、あなた……だれなの? 見たところ、この国の人じゃないだろうけど……」  彼女はまたくつくつと笑った。 「人を見た目で判断するものじゃないわ。私は、ただの人間よ」 「…………」  やっと会話になったと思ったらこれだ。彼女にまともな受け答えを期待するのは、もしかしたら間違っているのかもしれない。 「名前はそうね。ベラル、なんかどうかしら」  ずい、と上半身を倒し、座っている私に顔を近づけてきた。  急に人の手を掴んだり、顔を近づけてきたり。彼女の人との距離感に、いちいちびっくりしてしまう。それとも、彼女の国ではこの距離が普通なのだろうか。 「何、それ。嘘だってこと?」 彼女から目を逸らしながら訊いた。 「そんなことないわ。本名よ、一応ね」  まあ、これで少しは会話がしやすくなる。最短でも、駅に着くまでは逃げられない。なら、どうしてこんなことをしたのか、少し知りたくなっていた。
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