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そこにいたのは捜していたヴァレット博士ではなく、若い頃の博士にそっくりな銀縁眼鏡の男だった。
「あのー、ここ、ヴァレット博士の研究所ですよね……?」
先日、二十歳の誕生日を迎えたばかりのカスミよりも少しだけ年上に見える男は、困惑気味に蒼い瞳で自分を見ていた。
博士に恋人や妻がいたとは聞いてないが、失踪してすでに六十八年がたっている。
息子、もしくは孫の可能性も考えられなくないが。
「ああ。
博士は亡くなりました」
「そうですよね……」
博士が生きていれば九十六歳。
その可能性も考えなかったわけじゃない。
ならば。
「そのー、残された研究を見せてもらうことはできますか」
「できません。
博士の遺言で、死後は誰も研究所に入れてはならないと命じられています」
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