アンドロイドに眼鏡は必要か?

2/33
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
カスミはできあがったふたつの墓を見下ろした。 「あと、は」 きょろきょろと辺りを見渡すと、近くの花壇から花を摘む。 きれいに整えられた花壇の花を失敬するのは良心が痛んだが、もうこの花壇を手入れする人間も、見て楽しむ人間もいない。 摘んだ花を簡単に花束にすると、墓に供えた。 「ハーキース」 その名を口にすると、涙がまたこぼれ落ちる。 墓の前にしゃがみ込むと、カスミは彼と最後の話をした。 「じゃあね、ハーキース」 涙を拭って、立ち上がる。 こうしてカスミは研究所をあとにした。 二年前、カスミは失踪したヴァレット博士の行方を捜していた。 ようやくたどり着いたのは山奥に隠れるようにひっそりと建つ、研究所。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!