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運ばれてきたご飯を食べながら 仕事の話やプライベートの話を山ほどして。 2軒目でも全然話は絶えなかった。 向野の話は新鮮だし、恐らく天性の聞き上手だ。 言葉のセンスがいちいちツボにハマる。 もっと一緒にいたくて、 帰り道、電車に乗ろうとする向野の腕を掴んでいた。 「俺んち、来いよ」 「……いや、でも」 「わかった、何もしない。 けど、もう少し一緒にいたい。」 向野が困ったように苦笑した。 ぐらついているのがわかったので、畳み掛けるように言う。 絶対、もう一押しで落とせる。 「しないよ、向野ちゃんが嫌がること絶対。」 「ごめんなさい、今日は帰ります」 「なんで?俺のこと嫌い?」 「私、付き合ってない人の家に行くとか無理です……」 「じゃあ、付き合ってからならいい?」 「はい」 「付き合ってよ」 「いや、だから今日は」 ぐいっと二の腕を掴んで引き寄せて、 チューしていい?と聞く。 「だめ、です……」 「聞こえなーい」 俺はそういって、どん、と壁に押し付けて 唇を触れるだけのキスを落とした。 ひゃっ、と小さな声をあげた向野の、 柔らかい髪をそっと撫で付けて、耳元で囁く。 「めっちゃすきなんだけど、どうしたらいい?」
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