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「……だめです、ってば」 「無理だよ、 向野ちゃん可愛いもん。ほんとに可愛い」 「酔っぱらい」 「そうだけどさ」 「私、ほんとに大したことないですよ。 桜井さんにはもっといい人いますよ、絶対」 「しらねーけど、俺は向野ちゃんがいーの」 そういってぎゅうっ、と抱きしめれば、 向野は、わかりました、とつぶやく。 「私と、性的行為をしないのであれば、いいですよ」 刹那、思考回路がショートした。 「は?」 「チューがギリです。」 「はい?」 「それなら付き合ってもよいです」 「ちょっとまって、それ大分きつくない?」 「きついなら、私のことは諦めてください」 「……まじで向野ちゃんはさ」 くくっ、と笑いが漏れた。 「はい」 「いいよね、なんだろね、 俺のツボにいちいちハマるんだよね」 俺はそういって、にやける顔をそっと隠す。 「いーよ。キスまでね。プラトニックなやつね」 「えっ、本気ですか」 「うん、それで諦めると思った? ヤリモクなら社外にするから。 本気で、ちゃんと付きあいたいと思ってます」 「……じゃあ、これからよろしくおねがいします」 向野はそういって柔らかく微笑んだ。 その時俺が思ったのは、向野ちゃんって下の名前なんだっけ?ということだった。 初めてお互いを認識してたったの2週間。 俺たちは付き合うことになった。 但し、謎の制限つきで。
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