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「他の女とセックスしても、アカリは平気なわけ?」 「平気じゃないよ。だから別れる」 「なんだよ、それ、矛盾してねぇ?」 「別にしてないよ」 「でも、別れても、平気なんだ?」 桜井さんはそういって、眠いから寝るわ、と私のベッドへと向かう。 平気なわけない。だから、初めから諦めて。 別れても、平気にしておきたいだけだ。 「ねえ、明日土曜日だからどっか行かない?」 「どっか?」 「そう。デートしようよ」 「んー、元気があったらね」 「絶対昼まで寝ちゃうパターンだ」 「しょうがないじゃんー」 「そうだよね、じゃ、他の人と行く」 そういうと桜井さんは、明らかに不機嫌になる。 イライラしているときの癖、唇を舐めて、眉を潜める。 「……帰るわ」 「バイバイ」 「お前さぁ、ほんとにいい加減にしろよ」 「なにがよ」 「……しようがねえか。俺が惚れてるだけなんだから」 桜井さんははぁ、とため息をつき、遅いし寝ようぜ、と呟いた。 絶対、私の方が好きだよ。ばか。 「ねえねえ」 「なんだよ」 「明日ね観たい映画があってね」 「うん」 「一緒に行こうよ」 「起きれたらね」 「起きてよ」 「じゃあ起こしてよ」 「うん」 私は桜井さんの腕の中に入ってぐっと目を閉じる。1人だと広いベッドも、狭く感じてしまう。 ごつごつとした腕、なぜか心地良い。 彼のちょっと高い体温に、ほっとする。 「何の映画?」 「コテコテのラブストーリー」 「8割寝る」 言わない。言ってあげない。 でも、心の中で何度も何度も唱える。 好き、大好き。 仕事中の真剣な姿も、プライベートのゆるゆるした姿も、どちらも。 私の前だけで見せる甘えた顔も、 みんなの前でおちゃらけてしまうところも。 本当に、キスだけで我慢してくれているところも。 明日の映画で寝ずにいられたら、言ってあげてもいいかもしれない。
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