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「面白かった?」
「面白かったよ。よく寝た?」
「うん」
桜井さんは大きな欠伸をして、私の頭をポンポンと撫でた。
「なんか食べていこーぜ。食べたいもの、ある?」
「さっぱりしたものがいい」
「あー確かこの近くに、美味い蕎麦屋があった気がする」
「いいね、お蕎麦~」
映画館を出て、桜井さんに連れられるまま、
蕎麦屋に向かう途中、
桜井くん?と声をかけられた。
振り向くとナイスバディの綺麗なお姉さんが立っていて、
久しぶりぃ~とはしゃいだ声をあげる。
実はこれ、初めての経験ではない。
どれだけ女性関係激しいんだよ、とつっこみたくなるくらい、桜井さんは女性の知り合いが多い。
しかもどの人もえげつないくらい美人で、そして派手だ。
私とは正反対なタイプの。
私は気まずさを押し殺しながら、
桜井さんの横に立ち尽くす。
「これ、俺の彼女」
桜井さんは、とん、と私の背中を押す。
私は、こんにちは、と小さく漏らして頭を下げた。
どんな気持ちなんだろう。
全く正反対の私が隣にいるのを見て。
「え、めっちゃ若くない?」
「7コ下」
「へー。こんにちは~、
桜井くんのカノジョなんて、大変だねえ」
「何だそれ」
桜井さんが苦笑いをするのを見て、
はい、大変です、と私は笑顔で答えた。
あなたみたいなのが山ほどいますから、と心の中で呟く。
桜井さんが舌打ちして私の頭をぽすっと叩いた。
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