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* 「......なんか怒ってんの?」 一心不乱に蕎麦をすする私に、 桜井さんが尋ねてくるので、 「桜井さんのカノジョは大変だなあと思って」 とさらりと答えた。 「それこっちのセリフだから。 お前の彼氏、まじで大変だから、色んな意味で!」 じゃあさっきの綺麗なお姉さんと付き合えばいーじゃん、と心の中で呟く。 「いつあの制限は解除されるんですかねぇ......」 桜井さんがため息混じりに言うので、 私はとりあえず笑って誤魔化しておく。 「アカリちゃーん」 「アカリさーん」 ねえねえ、とぶりっこする桜井さんに、 冷たい視線を投げつける。 「くそー、なんだよ~」 「桜井さんの女の趣味が悪すぎるよ。 何で私なのか全然わからない。」 「だってアカリ、可愛いもん」 桜井さんは恥ずかしげもなく、堂々と言う。 こっちが恥ずかしくなって目を逸らす。 「俺は、誰もやらないこと、 進んで引き受けてて、 それでもニコニコ笑ってるアカリが、本当に可愛いと思う。 キラキラ見た目だけ着飾ってる女より、 頑張ってる女の方が俺はすき」 こんなにストレートに好きだと言われたことが今までない。 自慢じゃないが、モテたことなど人生で一度もないのだ。 「だからはやく俺のこと好きになってよ。」 「......善処します」 ごちそうさまでしたー、とお店の人に声をかけ、 お会計を払って店の暖簾をくぐった瞬間、 ぐいっと腕を掴まれて、そのままくちびるを押し付けられた。 「......っ!」 「ざまあ」 桜井さんはにやり、と笑って、 私のしっかりセットした髪を、ぐしゃぐしゃとかきまわした。
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