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05
スマホのアラームが終電を伝えてから、早1時間。
明日使う提案書作成がまだ終わらず、私の徹夜は確定していた。
終わらない。全然、終わらない。
焦りのせいか全然進まず、悪循環はつづく。
仕事が、好きだ。
それはいつも一貫した感情だ。
20代のうちはが、むしゃらに仕事をするべきだと思っているし、優先度も一番高くありたい。
ずっと必要とされていたい。
でも時々、本当に時々。
私の頑張りなんて誰もみてないんじゃないか、
一生気づかれないんじゃないかと、
どうしようもなく哀しくなるときがある。
私ばかりが損を食っているような、そんな感覚に陥るときがある。
いつか報われる、と何度も言い聞かせても。
そのいつかなんて一生来ないんじゃないかと。
少し泣きそうになったとき、がちゃり、とフロアのドアがあいた。
桜井さんが、やっぱりここにいたわ、と呟く。
「連絡よこさないから。
まだ仕事だろうなと思った。」
アカリ、と愛しそうに私の名前を呼び、
後ろから抱きついてきた。
「おまえ、何でまだいんの?」
桜井さんからはお酒とタバコの匂いがふんわりとした。
どうやら、飲み会の後、私の様子を見に来てくれたらしい。
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